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妹背 裕[漆造形]

[人は日々]

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四国・香川県(讃岐)は漆器の産地でもあります。
その讃岐を創作の現場として活動している造形作家です。

 

 

追憶の街

2018年

138×112cm

漆・漉し紙

 

 

夜の装いⅠ

2018年

122×91cm

漆・糊・漆板

 

 

羅漢

2018年

164.5×63.5cm

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[プロフィール]

1948年  香川県多度津町生まれ

1984年  香川県美術展奨励賞受賞

1986~2004年 東京ギャラリーで個展を隔年ごとに開催、またグループ展にも出品を重ねる

1995年より香川県内でも継続的に個展開催、グループ展に出品を始める

2010年  善通寺野外展実行委員会代表就任

2010、11、13、15年 「善通寺境内のアジール空間に魅力を感じた作家たちの野外展」

 


 

[論評]冊子「人は日々」No.02より)

丸亀市にある妹背さんの工房を訪ねたのはいつだったか、もうすっかり記憶に残っていないが、土蔵の中を改造したアトリエは外光が少なく昼間も薄暗くて、その中に紙の凧だのお面だの絵馬のようなものだの団扇だの、いわゆる讃岐(香川県)の土俗的な民芸品や民俗用具、はたまた廃棄されかかったようなありふれた生活用具のコレクションをアトリエの空間を埋め尽くすように展示している光景だった。

それで気が付いたのだが、妹背さんは讃岐平野という自らの生活と活動のフィールドの中で、珍しくもなんともないものではあるが目に留まるものは片端から拾い上げてストックしていくという行為を、特に意味づけすることも無く積み重ねていくという生活を営んでいるのだった。その気付きのあと彼の創作するものを見ていると、讃岐平野の中で見い出されたものをモチーフにして作品が制作されていることがわかってきた。私はそのひとつひとつを確認しながら作品に接していくことを通して、すでに二〇年以上を東京の空気を吸い続けてきた私の中で、讃岐の風土と生活が蘇ってくるのを感じた。そして讃岐平野の光景が、そのディテールを含めてとても親しみやすく、そして美しいものに感じられてきた。

(中略)

妹背さんは漆をメインの素材とする造形作家である。漆の扱いは、漆芸家のそれとは対極的と言えるほどにラフである。それは漆芸家にとってはそうであるような、有機物が提供する塗料ではなく、むしろ接着的なはたらきに比重が置かれているかのように、さまざまな物質・素材・オブジェクトを貼り合わせていく作風を展開する。そしてそれがあまりにも気ままで方向性なく感じられるので、一種のアナーキーな精神の漂泊がイメージされてくる。しかしその無秩序性を突き抜けた先で、ふいに、ある種の聖性をまとったエクトプラズマ様のものに出くわしたりする。妹背さんと宗教(仏教)とがどこでどう繋がるのか明確には説明できないが、四国八十八箇所の一域を担う四国香川県は讃岐平野の聖なる空気感の中に妹背さんは生きている、と言うことはできるだろう。